西谷浄水場再整備事業(浄水処理施設)に係る整備工事
横浜市水道局西谷浄水場再整備推進室
再整備推進課
土屋 太一
民間建設会社から横浜市へと転職。西谷浄水場再整備事業では入札手続き前から携わり、これまでの経験を活かしながら、工事の完成を目指す。
横浜市水道局担当者が語る
西谷浄水場の再整備事業
その背景と意義、使命
令和4年(2022年)4月より工事がスタートした
『西谷浄水場再整備事業(浄水処理施設)に係る整備工事』。
同年10月には地域の皆さまへの工事説明会を実施させていただき、
多くの方にご参加いただきました。
改めて、西谷浄水場再整備事業が計画された目的や意義について
西谷浄水場の歴史や他に類を見ない特徴なども含め、
説明会だけではお伝えできなかったお話を
横浜市水道局再整備推進課の土屋太一さんに聞きました。
ついにスタートした、
未来の横浜のための
大規模な再整備事業
―10年にわたる再整備事業、その目的とは
西谷浄水場は、大正4年(1915年)に造られた100年以上の歴史を誇る浄水場。創設以来、横浜市の成長に合わせて拡張や改良、整備の工事を幾度も行っており、今日も現役の浄水場として横浜市の水インフラの約4分の1を支えています。その施設や能力を更に刷新・改良し、より安定した水処理で安全な水の供給を実現するのが、今回の再整備事業です。
再整備事業の目的は3つです。
ひとつは、耐震性のない施設の耐震化。大規模地震が発生しても浄水処理がストップしない、災害に強い浄水場に生まれ変わります。
2つめは、粒状活性炭処理の導入。水源である相模湖で藻類が繁殖すると、水にかび臭が発生します。それを取り除くため、現在は人力で活性炭を注入していますが、処理施設を導入することで、常に「安全で良質な水」を供給することが可能になります。
3つめは、処理能力の増強。最新の施設に刷新することで、処理能力は39.4万㎥まで増強され、供給エリアの拡大も実現します。
施設の耐震化
ろ過池と排水池を耐震化することで、大規模地震などにおいても浄水処理を継続できる災害に強い水道になります。
粒状活性炭処理の導入
藻類の繁殖によるカビ臭など※を確実に除去するため活性炭に水を通し、常時処理できる施設を導入します。
※水温が上昇してくると、水源で藻類等が繁殖し、水にカビのようなニオイをつけることがあります。
処理能力の増強
処理能力を現在の35.6万㎥/日から、39.4万㎥/日に増強することで、自然流下系浄水場の給水エリアを拡大します。
各事業のスケジュール
DB方式 Design Buildの略で、民間事業者が対象施設の設計(Design)及び工事(Build)を一括して行う方式です。施設の運転・維持管理は横浜市水道局が行います。
DBO方式 Design Build Operateの略で、民間事業者が対象施設の設計(Design)及び工事(Build)並びに運営(Operate)を一括して行う方式です。
―なぜ“いま”再整備が必要なのか
大規模地震がいつ起きてもおかしくない状況を考慮すると、西谷浄水場については、一日でも早く耐震化し、さらに能力を増強することにより、西谷浄水場からの給水エリアを拡大させ、災害や停電などの際にも給水の安定性を向上する必要があります。
「エコで災害に強い浄水場」を守り、次代へつなぐ
―西谷浄水場を「再整備」する意義とは
相模湖から原水を採り入れ、みなとみらいなど横浜の中心部へ水を供給している西谷浄水場ですが、取水から浄水処理が完了するまで「自然流下」で送っています。自然流下は、上流から下流へと重力に従って流れる水の力を利用する方法。ポンプは使用していません。
電気が必要なく、自然の力を利用するため、災害に強く、エコで、環境にやさしい浄水場なのです。
再整備を行って処理能力を向上させることで、供給エリアも拡大します。つまり電気を使わず供給できる水の量が増え、CO2やコストも削減されるのです。
自然の力を利用する自然流下系の浄水場を、これからも大切に永く使い続けられるよう、しっかりと再整備を行い、次の世代へと受け継ぐ。そこに大きな意義と使命感を感じています。
処理能力の増強前39%
処理能力の増強後51%
より「愛される西谷浄水場」を目指して
―西谷浄水場再整備事業の難しさとは
先ほどもお話ししたように、多くの人の生活を支える水インフラを、決して止めることはできません。
そのため工事中も、常に浄水処理を継続し水道水の供給を行います。そこが何よりも難しく時間がかかる理由で、当初は「再整備事業は20年かかる」と試算されていました。それを今回の工事を担う異業種JV(ジョイントベンチャー)の提案で10年まで短縮することができました。確かな経験と技術で困難を克服し、無事工事を遂行できると確信しています。
―地域の皆さまへのメッセージ
西谷浄水場には、国登録有形文化財として保存されている価値ある歴史的建造物が数多くあります。今回の工事で新しい施設の建設の支障になるので、専門会社に依頼し、その歴史的な価値を損なうことがないよう慎重に移設を行っています。
また、西谷浄水場自体が、横浜のランドマークであり、工事中にも敷地の一部を開放し、憩いの場を提供する予定です。
今後はこのサイトを通じて工事の情報やコンテンツの発信を行うほか、様々なカタチでの情報発信や見学会なども予定しています。10年という長期にわたる工事ですので、地域の方には様々なご不便をおかけすることかと思います。いただいたご意見に真摯に対応し、再整備事業を成功に導ければと考えています。ぜひよろしくお願いします。